月刊てあて「特集」

今月の特集

2024年7月1日<179号(2024年7月)>

乗り越えながら強くなる

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ松戸 川田勇次
  • レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 中島久美子
乗り越えながら強くなる
「食べることが大好きなので、胃ろうになった時は本当に残念でした。命を守るため決断しましたが大泣きしました」とお母さま。病気を通して、医療、介護、そして同じ病気を持つ親同士の出会いに支えられ、困難に直面するたびに家族で強くなれました。施術担当マッサージ師の川田勇次と。

 レノックス・ガストー症候群は指定難病にあたるてんかんです。N.Wさんは子どもの頃に発症しさまざまな治療を試みながら現在に至ります。39歳になる今も、家族をはじめ、サポートするさまざまなスタッフと一丸となって、次々と訪れる病の壁を乗り越えています。

思い出は家族とともに

思い出は家族とともに
階段の横には、家族の大切な思い出があります。
4月2日に39歳の誕生日を迎え、今年もケーキにキャンドルを灯してお祝いしました。キャンドルのあたたかい揺れる炎を見るのが大好きなNさん。穏やかで優しい性格は今も健在です。

 生後1カ月の時に敗血症で入院、5歳まで歩くことができなかったというNさん。
 当時はまだはっきりとした原因はわかっていなく、レノックス・ガストー症候群が発症していると判明したのは9歳の頃でした。それでも20歳くらいまでは歩くことができていたので、いろいろな所へ家族で旅行に行きました。
 「オーストラリアに行った時は、飛行機に乗った途端に腹痛になったり、紋別に流氷を見に行った時は、あまりの寒さでアイスバーンの上を急に走り出したり(笑)」。他にも花火大会やサーカス、ねぶた祭りなど、すべてがNさんにとって宝物のような思い出です。

「人との出会いに救われてきました」/J(母)

「人との出会いに救われてきました」/J(母)
在宅マッサージは主に、筋肉麻痺、関節拘縮を緩和する施術を行なっており、今は、ベッドサイドに座れるようになるのが目標です。また週1回の訪問では、時々、いたずらで施術者のマスクを取ったりと、リラックスした時間を過ごしています。

支え合い、助けられ

支え合い、助けられ
施術が終わって身体も楽になり、ほっと一息です。

 子どもの頃、お兄さんがお母さんに怒られ落ち込んでいると、頭を撫でてなぐさめることも。性格は優しく、穏やかで、言葉にできなくても、人の動きを見て、敏感に反応します。今でも、ちょっとした環境の変化で熱を出してしまうこともしばしばです。
 36歳まで在宅で介護をしていましたが、3年ほど前から誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、度重なる入退院で身体機能が低下。苦渋の決断で、胃ろう造設の手術をし、その後、施設へ入所しました。
 在宅マッサージは、施設からの紹介でスタート。懸命にリハビリに励みながらも、施術者と和気あいあいとした時間が、Nさんの楽しみの一つとなっています。
 目標は、再び座位ができるようになること。そして、少しでも口から食べ物を食べられるようになることです。
 病気を通してさまざま出会いがありました。大きな壁にぶつかったときも、家族で支え合い、出会った多くの人に助けられて、今があります。