月刊てあて「特集」

今月の特集

2024年9月1日<181号(2024年9月)>

人生はインディペンデント

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ飯能 菊池徹郎・福井岳史
人生はインディペンデント
「なくしたものを数えるよりも、あるものを数えたほうがずっと楽しい」と話すKさん。51年間の健常者人生と、その後の障がい者人生。2つの人生を経験しているからこそ、言葉には深みがあり説得力があります。施術担当マッサージ師 菊池徹郎と福井岳史(左下)

 K.Kさん(71歳)は、51歳の時に電撃性紫斑病という体の先端から壊死していく病を発症し、四肢を切断しました。「本当に辛かったのは、手足がなくなったことよりも仕事ができなくなったこと」と言います。そんなKさんは現在、障がい者団体の理事や代表として障がい者を支える側に。常に前向きに活動する姿は、希望とバイタリティーに満ちています。

2つ目の人生

2つ目の人生
運転席に座ったまま、屋根上のオートボックスへ車いすを電動収納。スライド式カーゴから、クレーンが下りてきて、車いすを吊り上げそのまま人の手も借りずにボックスの中に自動的に収納されます。

 SNSが普及してたくさんの情報を得られる時代になりましたが、その中から自身の症例に合ったものを見つけることが逆に困難になっています。Kさんは、自分の経験をもとにそうした困難を抱える人にアドバイスをする伴走型の支援活動を主に行っています。
 食品メーカーの営業マンとして活躍していた平成16年4月5日に異変が訪れました。体調が悪く体を休めようとしていた矢先、意識不明に。その後、1カ月後に目を覚ますと、両手足が切断された状態で病院のベッドの上にいました。電撃性紫斑病という肺炎球菌による感染病でした。
 「当初は未来が震えるほど怖かったのですが、1年くらいリハビリをすると落ち着いてきて、手足のない人間がどこまでできるか、自分の人生で実験してやろうと考えるようになりました」。

「何ができるかではなく、何をやりたいかです」/K.K

「何ができるかではなく、何をやりたいかです」/K.K
長時間の座位姿勢や重い装具着用により、首や背中を中心に痛みが増すため、マッサージで体を整えることは必要不可欠になっています。併せて、ストレッチや関節可動域訓練も行い、ADLの維持を図っています。

繋がりが希望に

繋がりが希望に
趣味は絵画鑑賞とロック音楽、そして旅行です。海外旅行を目標に、5大陸の制覇を目指しています。
今ではパソコンも難なく使いこなし、書類作成などお手のもの。

 1年8カ月続いた闘病とリハビリ生活では、訓練を重ねて義手も使いこなし、装具士協力のもと車の運転も可能に。退院後は、看護師の奥様と一緒に在宅生活を送っています。
 一人で電車に乗って出かけたり徐々に行動範囲も広げ、積極的に人と繋がり、気づけば、11の障がい者団体の代表や理事を務める立場に。また、6年前にはISPO(国際義肢装具連盟)の世界大会に参加するために渡米し、常にインディペンデント(自立)と、チャレンジ(挑戦)が大切だということを学びました。
 多忙に活動する中で、椎間板ヘルニアに悩まされてきた苅谷さんは、ケアマネジャーの紹介で昨年、在宅マッサージをスタート。義手によるオーバーユースもあり常に体の痛みがありますが、施術により少しずつ緩和しています。
 夢は、障がい者が当たり前のように普通に生きられる世界を実現すること。自立と挑戦の日々は、これからも続いていきます。