月刊てあて「特集」

今月の特集

2024年10月1日<182号(2024年10月)>

置かれた場所で明るく咲いて

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ昭島 野間覚・尾方祐司
  • レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 石川典子
置かれた場所で明るく咲いて
高齢なのにしっかり歩いている人など、他の入居者たちの様子もHさんの励みの一つになっています。「娘が来たとき、私が立てるようになっていたのでびっくりしていました」。少しずつ努力の成果が出てきています。施術担当マッサージ師の野間覚、尾方祐司(右上)

 シルバーヘアに白い肌、クリッとした目がチャームポイントのH.Mさんは、昭和15年生まれの今年で84歳。約3年前に外出先で転んで肩を脱臼したことをきっかけに、立つ、歩くなどに介助が必要になり、施設に入所しました。一番の目標は自由に歩くこと。常に希望持って、前向きに日々を過ごしています。

自由に歩きたい

自由に歩きたい
施設の行事など積極的に参加するHさん。お部屋の壁の予定表には、ぎっしりと日程が書かれています。毎朝ラジオ体操で体を動かしたり、おしゃべりしたり、手作りを楽しんで気持ちをリフレッシュしています。

 「マッサージ中の世間話が本当に楽しいの。人間って会話が大切」とにっこり笑顔で話すHさん。施設にはたくさんの入居者がいますが、歩くことが難しいと交流の機会は限られてしまいます。ですが、定期的なマッサージの時間が心置きなくコミュニケーションができる貴重な時間になっています。
 立つ、歩くなど日常生活に介助が必要になり自宅から施設に移ったのが約3年前。外で転倒し、肩を脱臼したのがきっかけでした。
 入所した当初は全身の痛みがあり、立つこともできませんでしたが、マッサージを続けて症状も軽減。今では食堂へ移動するときにも、一人で車椅子に乗れるようになり、自立して過ごしています。
 「時間を見つけて、指やかかとを動かしたり、つま先の上げ下げをします。私にとってはすごく大事なことなの。だって歩けるようになりたいから!」。

「周りの人に支えられて、乗り越えてきたから楽しく生きられます」/H.M

「周りの人に支えられて、乗り越えてきたから楽しく生きられます」/H.M
常に、腰や右膝の痛み、動きにくさに悩まれているので、マッサージとストレッチで痛みの緩和と可動域の拡大、血流促進を図っています。また、立位訓練や足をあげる運動を行い、ADL向上に努めています。

希望を持つこと

希望を持つこと
文字を書く練習は、Hさんにとって欠かせない日課となっています。

 Hさんの、今の一番の目標は、自分の足で自由に歩いて、施設内の友達の部屋へ遊びに行くこと。また、もう一つ取り戻したいものがあります。それは「書くこと」です。肩を痛めてからは字が書けなくなっていましたが、娘さんに買ってもらったノートに、毎日コツコツと新聞の社説を書く習慣をつけてきました。「辛いときは、見出しと日付だけでも書き続けました」。
 ぎっしりと文字が書き込まれたノートは、まぎれもなく「文字が書けるようになるまで」の努力の奇跡です。そして「努力をすることが何より大事。希望を持ち続ければ、どんなことでも叶うと信じています」と言います。
 野に咲く花のように置かれた場所にしっかり根を張って、一生懸命生きています。