月刊てあて「特集」

今月の特集

物語の最終章

  • てあて在宅マッサージ浦和/細田清美
物語の最終章

13年前、初めて訪問した時、その方は脳出血の後遺症で右半身に麻痺があり、歩くこともできませんでした。

訪問を重ねる中で少しずつ力が戻り、やがて歩けるようになり、右手でお米を研げるまでに回復されました。その一つひとつの変化を、そばで見守れたことは、私にとってかけがえのない時間でした。

7年前には糖尿病を患い、さらに脳梗塞を発症。できることに変わりはなかったけれど、気持ちが変わってしまい、リハビリへの意欲が低下。あまり運動をしてくれなくなりました。それでも訪問を嫌がることはなく、いつも笑顔で迎えてくれました。

そして3か月前…、末期がんが発覚。あっという間に歩けなくなり、立てなくなり、座れなくなりました。食事も取れなくなり、毎日点滴をするようになりました。
出来ることは少なくなったけど、「先生が来ると安心する」と仰ってくださり、ご家族も、「先生、最後まで来てよ」と言ってくださいます。

私たちは家族ではありません。それでも13年間、同じ方向を向いて、共に歩んできたからこそ、お互いにしかわからない『絆』ができたと感じています。

そんな私たちの物語も最終章に入りました。残された時間を最後まで大切に、絆という名の愛をもって、見送りたいと思います。

レスキュー隊

  • てあて在宅マッサージ福島/関美穂
レスキュー隊

今日の訪問は残り一件。祝日でいつもと異なる訪問ルート。細い路地を曲がった瞬間、『ガタンッ!』と、衝撃が走る。
草に隠れて見えなかったが、縁石に乗り上げてしまったようだ。近くのコインランドリーに車を止め確認するとタイヤがパンクしていた。

どうしよう…と、焦る気持ちを抑え、訪問予定の患者様へ連絡し事情を説明。遅れてもいいので、来て欲しいとのことだった。
近くに整備工場を発見したが祝日のため休業。JAFに連絡するも到着まで一時間以上かかるとのこと。今一度、患者様へ連絡するが電話がつながらない。

さて、だいぶ遅くなってしまうが患者様のご都合は大丈夫だろうか。そんなことを考えていると、一台の車が私のすぐ隣に止まった。

「関さーん! レスキュー隊を連れて来たよ!」

車から降りて来たのは、これから訪問予定だったN様の娘さんだった。娘さんのご主人とお孫さん、たまたま休みで帰省していた自動車整備の仕事をしている息子さんを連れ、家族総出で駆けつけてくれたのだ。ほんの数分の間にスペアタイヤへ交換して下さり、瞬く間に走行可能になった。

予想もしていなかった出来事にまず驚いた。ピンチを救って下さった「レスキュー隊」の皆さんには何度感謝の言葉を伝えても足りなかった。
N様宅へ向かい、訪問が遅れたこと、ご家族様にもご迷惑をおかけしたことを謝罪するが、「良かったね。良かったね」と、施術中終始笑顔のN様。その笑顔にまた癒され次第に気持ちも落ち着いた。

N様に限らず、私は日々患者様に支えられている。
「運転気を付けてね」「風邪ひかないようにね」「雪降ったから転ばないように」等、皆様声をかけて下さる。
ご自身の方が辛さや苦痛があるはずなのに、私や私の家族のことまで自分事のように心配して下さる。そのやさしさが嬉しく、いつも励まされている。

これからも患者様に恩返しをしていきたい。寄り添い少しでも力になりたい。そう改めて思ったある日の出来事であった。


          * * * *