実りの秋 勤労感謝の日に
- 2024年11月23日
11月23日は、「勤労感謝の日」。
戦前まで「新嘗祭(にいなめさい)」と呼ばれ、その年の収穫の恵みに感謝する日とされ、重要な宮中式典でした。戦後その趣旨は『勤労を尊び、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう日』として改称され国民の祝日になりました。
現在の日本は、もはやかつてのような農業国ではありません。
農業を含む第一次産業の就業者数が、1950年代には全就業者のおよそ40%を占めていましたが、今では3%台までに減少しました。その結果、食糧自給率も80%から38%までに低下しています。
ところで日本の農業は、家族経営(自営)が中心の営みでした。何をどれだけ、いつ栽培し、どんな作業をして収穫に至るのかを自ら計画しそれに基づいて作業を進める。確かに、日々の農作業は、肉体的な苦痛を伴う労働です。しかし、日々、作物の生長を喜び、収穫に至るまでの全工程を思い描きながらの労働でもあります。芸術家が一つの作品を完成させる過程のような、一心不乱で労働に没頭する様子が思い浮かびます。こうした労働は苦痛を与えるどころか、人間の根源的な喜びを享受できることもあるでしょう。
国民の大多数が「サラリーマン化」して、労働がますます細分化され分業している社会にあっては、医療従事者は、自らの仕事の出来栄えに対する強い関心、労働の手応え、そして労働の自立性を堅持できる数少ない職業です。自らの判断で自由に裁量できる範囲は自ずと限定されていますが、会社が掲げる目標に自分自身がどれだけ共鳴できるか、与えられた役割にどれだけ納得できるか、によって労働の意味合いは大きく異なると思います。
この共鳴と納得に裏付けされた、自由裁量権の拡大が、働き甲斐を醸成すると思います。
てあての労働が、『手作りの農業のような収穫の恵みに感謝し、喜びを共有し、社会のエッセンシャルワーカーとして国民がたがいに感謝しあう』ことを願っています。