言葉に出した瞬間に、消えてしまうもの
- 2013年1月11日
アメリカの社会学者の書いた 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』
という本が話題になったのは、もう30年ほども前だ。
日本の高度成長を分析し、特性を称賛し、
アメリカは、日本から何を学ぶべきかという調子だった。
私が、社会人になった頃で、正直、実感(?)がなかったが、
似たような本が、次から次に出てブームになったのは覚えている。
「日本が誇れるもの」について、
別段、日本人が考えを巡らせていたわけではなかったし
ナンバーワンと言われても、喜ぶ人は、たぶん多くはなかったと思う。
むしろ、追いつき追い越せの目標であったアメリカ人から
称賛されて、驚いたのが実感ではなかっただろうか。
あれから、、、現在。
大勢の人が、あのころに比べて日本は 凋落してしまったと感じている。
「誇りある日本をつくろう!」 という自民党の心地よいキャッチフレーズが
声高に、日本各地をめぐり、多くの支持を得た。
作家 村上 龍は言う。
『 それでは、「日本が誇れるもの」はないのかというと、
決してそんなことはない。
・・・略・・・
日本が世界に誇れるものが、おそらく他にもたくさんある。
だが、それを声高に訴える必要もないし、
国民すべてが意識する必要もない。
個人の誇りも、国家的な誇りも、静かに胸に秘めて、
困難に立ち向かうときの糧とすべきであって、
数え上げ、並べ上げて安心したり、自慢したりするようなものではない。
言葉に出した瞬間に、消えてしまうものがある。
誇りも その一つかも知れない。 』