ココロ温まるお話 「最後のゴーヤ」「てあてが施術終了の合図」
- 2022年8月16日
- 出版物(島崎/その他)
「月刊てあて」154号・みんなの手、155号・いきいき便り
コロナで密を避ける風潮にあって ココロの密はより一層密になって ココロ温まるお話
「在宅マッサージにまつわる感動体験!2022」より
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最後のゴーヤ
てあて在宅マッサージ浦和/松原信也
Kさんとの付き合いは約5年。週1回訪問していた。パーキンソン病を患っていたがとても活動的な方でした。
趣味は家庭菜園で、自宅の庭で野菜を育てていた。大事に育てた野菜を食べてもらえるのが嬉しいと、夏はゴーヤ、冬は大根など、訪問するたびにいつも立派な野菜を頂いた。
7月のある日、Kさんが入院をした。私は、すぐに退院するだろうと思っていた。ちょうどゴーヤの話をしていたので、今年も楽しみにしていた。
しかし、8月になったある日。Kさんが亡くなられたと、連絡があった。あまりにも予想外のことで私は困惑した。
少し日をおいて、Kさん宅を訪れ、ご焼香をあげさせていただいた。遺影のKさんは柔和に微笑んでいた。
テーブルには、新聞紙で包まれた見覚えのあるものが用意されていた。それは奥様が用意してくれていた最後のゴーヤ。
待たせすぎたのか、よく熟れたゴーヤだった。
Kさん、ありがとう。
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「てあて」が施術終了の合図
てあて在宅マッサージ浦和/鈴木義則
受け持つ患者様の中には、言葉も発せられない、身体も動かすことができない方もいらっしゃいます。
そのような患者様方の多くは関節拘縮が進行しています。マッサージは痛みを伴うこともあるため、目を見つめ、表情を伺い話しかけながら行います。
その日の体調は、体温や血圧等のバイタル、顔色や身体全体の様子から推し量ります。
そして、施術終了の時間が近くなると、毎回考えます。何かやり残したことはないか、患者様が何か欲していることはないか、安全確保は、ポジショニングは大丈夫か‥‥と。
多様な困難を抱える患者様に対し、自身の未熟さに引け目を感じることもありますが、施術終了後に、必ず心がけていることがあります。
それは、毎回患者様の肩口にそっと「てあて」をしながら施術終了の挨拶をすることです。
そうすることで私はもちろんですが、患者様も安心して身体を任せてくれることを願って‥‥。
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